演劇と世の中のコミット

やってみると、変わる。

演劇が世の中のために、できること
人と演劇の新しい可能性をつくりだす
 

「演劇も表現者も、自分たちだけの狭い世界に閉じこもっていてはいけない。常に、自分のまわりで起こっていることに目を向け、その中で何らかの存在になれることを考えるべきである」

伊藤正次演劇研究所の教えを土台にする、Ito・M・Studioでは、演劇と世の中の新しい関わり方をつくりだす試みにも取り組んでいます。そのひとつが、「演劇の考え方」「演劇の技術」を取り入れた目白短期大学での社会福祉援助技術(介護実習)の授業。

介護の現場では、何より「人間への理解」が大切。ですが、多くの生徒にとって、自分たちと生きてきた時代や経験、価値観すべてが違うお年寄りとコミュニケーションを行うことは想像以上に難しいことだといいます。

そこで、他者の存在を「自分の肉体を通して感じる、理解する」さまざまな演劇の演習を経験していくことで、知識だけでは身に付けられない他者理解の根本を身に付けるということに挑戦するというのが、この授業プログラム。

その結果、最初は「自分が、これをしなければならないからする」という、自分の世界だけの片想いのコミュニケーションだったものが、相手を理解し、相手を感じながらの両想いのコミュニケーションをとれるようになっていきます。すると、世界が変わって見える。ふたりの世界が豊かになるのを実感する瞬間が生徒に訪れるのです。

演劇の技術である「自分の役を、相手のためにつくる」という、本当の意味で役を生きることができれば、どこに行っても、どんな仕事をしていても「相手にとって魅力のある」存在になることができるというのが、この授業のポイント。それは、同時に、演劇のちからによって人間をつくり、高めることでもあると思います。

私たちのやっていることは遠回りでアナログで、コピーもできず、一回限りの使いきり。スグには何かの役に立たないかもしれません。でも、形のない分、人と人の間でずっと残り続ける。だからこそ、コミュニケーションに悩む、今の世の中に必要なものなのかもしれません。